1/ 4
http://www.jcr.co.jp
15- D- 0244 201 5 年 7 月 3 日
民鉄大手各社の 15/ 3 期決算の
注目点
民鉄大手各社※ の 15/ 3 期決算および 16/ 3 期業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究所(J C R)の現 況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
※ 東武鉄道、相鉄ホールディングス、東京急行電鉄、京浜急行電鉄、小田急電鉄、京王電鉄、京成電鉄、 西武ホールディングス(以上、東日本エリア)、西日本鉄道、近鉄グループホールディングス、阪急 阪神ホールディングス、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、名古屋鉄道(以上、西日本エリア)
1. 業界動向
J C R 格付先の民鉄大手 14 社合計の 15/ 3 期鉄道輸送人員数は 73 億 2, 172 万人(前期比 0.6%減)と直近の ピークであった 14/ 3 期とほぼ同水準となった。期初計画では、消費税増税に伴う駆け込み需要の反動を織 り込み、大幅な減少が見込まれていたが、定期(同 0. 4%減)、定期外(同 0. 7%減)ともに大きく落ち込ま なかった。地域別では東日本エリアが同 0. 4%減、西日本エリアが同 0. 8%減である。落ち込みが小さかった 要因としては、景気回復に加え、インバウンドの増加による空港関連輸送や沿線観光地への旅客輸送の増加 などが考えられる。
直近ボトム(05/ 3 期、70 億 6, 778 万人)との比較でみると、15/ 3 期鉄道輸送人員は 3. 6%増加しているが、 エリア別に見ると東日本エリアが同期間で 7.0%増加したのに対して西日本エリアでは同 0. 1%増にとどまっ ている。西日本エリアの回復が弱い要因としては、①人口減少率が大きいこと②軌道幅の問題もあり相互直 通運転が少ないこと③地下鉄や J R などとの競合が多いこと−などがあげられる。したがって、過去の水準 との比較では西日本エリアの民鉄の方が回復が鈍く、事業環境は東日本エリアの民鉄と比較して依然として 厳しいと見ている。
16/ 3 期鉄道輸送人員は、予想を開示している 11 社ベースで 15/ 3 期比 0. 9%増である。消費税増税に伴う 駆け込み需要の影響を受ける前の 13/ 3 期との比較では 2. 3%増となっており、輸送人員は増加トレンドにあ ると予想されている。エリア別では東日本エリア同 2. 1%増、西日本エリア同 2. 7%増であり、インバウンド 増加の寄与などが織り込まれているものと考えている。
西日本エリアの民鉄を中心に、鉄道事業における人件費の抑制やワンマン化の拡大など運行効率の向上に 向けた取り組みを進めているが、近年は動力費の上昇の影響を受けている。
2. 決算動向
15/ 3 期民鉄大手 14 社合計の営業収入は 7 兆 2, 765 億円(前期比 0. 1%増)、営業利益は 5, 992 億円(同 4. 8%増)となった。セグメント別では、運輸事業営業利益は 2, 644 億円(同 7.8%増)、関連事業(運輸事業 以外セグメント)営業利益は 3, 293 億円(同 6. 1%増)となっている(※ セグメント別利益は内部取引等考 慮前)。期初計画では、消費税増税の反動などを織り込み、同 3. 2%営業減益の予想であったが、①鉄道輸送 人員が堅調に推移したこと②不動産分譲販売が比較的好調であったこと③インバウンドの増加などによりホ テル事業において客室稼働率、客室単価ともに上昇したこと−などが増益となった主因である。これに伴い、 14 社合計の E BIT DA は 1 兆 1, 363 億円(同 2. 6%増)となり、E BIT DA マージンは 14/ 3 期 15.2%から 15/ 3 期 15. 6%へ改善した。
2/ 4
http://www.jcr.co.jp
による SPCからの資産買い取り、西武ホールディングスによる東京ガーデンテラス(紀尾井町プロジェク ト)工事の進捗および南海電鉄による大阪府都市開発の株式取得など個社の状況に起因するところが大きく、 総じて投資は減少傾向にあった。投資キャッシュフローは増加したものの営業キャッシュフローの範囲内で あったことから、有利子負債残高は 14/ 3 期末 8 兆 6, 866 億円から 15/ 3 期末 8 兆 4, 715 億円(一部 J C R 推 定)に減少した。有利子負債残高の直近ピーク(09/ 3 期末 9 兆 5, 257 億円)との比較では 11. 1%減少してお り、キャッシュフロー創出力の向上を背景に財務改善が進んできている状況がうかがえる。この結果、有利 子負債/ E BIT DA 倍率は直近ピーク 9.8 倍(10/ 3 期)から 15/ 3 期 7.5 倍まで改善した。有利子負債の削減に 加え、自己資本の蓄積が進んだことにより、DE R は直近ピーク 3. 4 倍(09/ 3 期末)から 15/ 3 期末 2. 0 倍と なっている。
3. 決算に
お
け
る
格付上の
注目点
14 社合計 16/ 3 期営業収益は 7 兆 3, 267 億円(15/ 3 期比 0.7%増)、営業利益は 5, 810 億円(同 3. 0%減) と予想されている。セグメント別では運輸事業営業利益 2, 696 億円(同 2. 0%増)、関連事業営業利益 3, 149 億円(同 4. 4%減)との見通しとなっている。運輸事業をエリア別に見ると東日本エリアでは同 3. 2%営業増 益の予想に対して西日本エリアでは同 6. 8%営業減益の予想となっており、西日本エリアを中心に動力費の 増加などのコスト増を強めに織り込んでいる様子がうかがえる。関連事業では 15/ 3 期に好調だった分譲事 業における販売減少を予想する会社が多いが、一方でホテル業などインバウンドの増加による収益拡大が見 込める事業もあり、総じて保守的な想定となっている可能性は高い。
16/ 3 期を初年度とする中期経営計画を発表した民鉄は 14 社中9社ある。これら中期経営計画の特徴的な 点は、利益見通しは総じて抑えめである一方(最大でも 3 年間で 15/ 3 期比 9%増程度)、関連事業強化など を目的に成長投資枠を設定し、今後の利益成長に向けた積極的な投資姿勢を打ち出した会社が多い(9 社中 6 社)ことである。このため、中期経営計画最終年度に向けて有利子負債の増加を見込む会社も見られる。 投資先は、不動産賃貸物件の取得や宿泊特化型ホテルの拡充などが多く、将来的に比較的安定したキャッシ ュフローが見込めるが、都心部を中心に不動産市況が上昇していることなどから、賃貸物件の取得やホテル 展開に適した用地の取得が進まない可能性が想定される。物件の取得において各社は当面難しいかじ取りを 求められることになると考えている。
(担当)上村 暁生・加藤 直樹
(図表 1)民鉄大手 14 社の連結業績の推移 (単位:億円、倍、%)
14 社合計 東日本エリア計 西日本エリア計
前期比 前期比 前期比
営業収益 13/ 3 期 68, 396 1. 6 38, 132 1. 5 30, 264 1. 9
14/ 3 期 72, 661 6. 2 38, 711 1. 5 33, 950 12. 2
15/ 3 期 72, 765 0. 1 38, 780 0. 2 33, 985 0. 1
16/ 3E 73, 267 0. 7 39, 208 1. 1 34, 059 0. 2
営業利益 13/ 3 期 5, 140 17. 3 2, 834 16. 2 2, 305 18. 7
14/ 3 期 5, 719 11. 3 3, 199 12. 9 2, 520 9. 3
15/ 3 期 5, 992 4. 8 3, 346 4. 6 2, 645 5. 0
16/ 3E 5, 810 - 3. 0 3, 351 0. 1 2, 459 - 7. 0
経常利益 13/ 3 期 4, 451 23. 3 2, 557 24. 4 1, 894 21. 9
14/ 3 期 5, 214 17. 1 3, 011 17. 7 2, 203 16. 3
15/ 3 期 5, 526 6. 0 3, 114 3. 4 2, 412 9. 5
16/ 3E 5, 221 - 5. 5 3, 053 - 2. 0 2, 168 - 10. 1
当期利益 13/ 3 期 2, 601 35. 1 1, 599 38. 4 1, 002 30. 1
14/ 3 期 3, 145 20. 9 1, 933 20. 8 1, 212 21. 0
15/ 3 期 3, 472 10. 4 2, 017 4. 4 1, 456 20. 1
3/ 4
http://www.jcr.co.jp
14 社合計 東日本エリア計 西日本エリア計
前期比 前期比 前期比
EBI TDA 13/ 3 期 10, 546 6. 1 6, 206 5. 7 4, 340 6. 8
14/ 3 期 11, 076 5. 0 6, 490 4. 6 4, 586 5. 7
15/ 3 期 11, 363 2. 6 6, 568 1. 2 4, 795 4. 6
有利子負債 13/ 3 期 90, 423 - 2. 6 50, 682 - 2. 0 39, 741 - 3. 3
14/ 3 期 86, 866 - 3. 9 49, 649 - 2. 0 37, 217 - 6. 4
15/ 3 期 84, 715 - 2. 5 48, 425 - 2. 5 36, 290 - 2. 5
EBI TDA マージン 13/ 3 期 15. 4 16. 3 14. 3
14/ 3 期 15. 2 16. 8 13. 5
15/ 3 期 15. 6 16. 9 14. 1
DER 13/ 3 期 2. 6 2. 5 2. 9
14/ 3 期 2. 3 2. 3 2. 4
15/ 3 期 2. 0 1. 9 2. 0
有利子負債 13/ 3 期 8. 6 8. 2 9. 2
/ EBI TDA 倍率 14/ 3 期 7. 8 7. 6 8. 1
15/ 3 期 7. 5 7. 4 7. 6
(出所:各社決算資料より J C R 作成)
【参考】
発行体:東武鉄道株式会社
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
発行体:相鉄ホールディングス株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:ポジティブ
発行体:東京急行電鉄株式会社
長期発行体格付:A A - 見通し:安定的
発行体:京浜急行電鉄株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
発行体:小田急電鉄株式会社
長期発行体格付:A A - 見通し:安定的
発行体:京王電鉄株式会社
長期発行体格付:A A 見通し:安定的
発行体:京成電鉄株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:株式会社西武ホールディングス
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
発行体:西日本鉄道株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
発行体:近鉄グループホールディングス株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:ネガティブ
発行体:阪急阪神ホールディングス株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
発行体:南海電気鉄道株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
発行体:京阪電気鉄道株式会社
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
発行体:名古屋鉄道株式会社
4/ 4
http://www.jcr.co.jp
■留意事項
本文書に記載された情報は、J C Rが、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、J C Rは、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、J C Rは、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。J C R は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、J C Rの格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。J C Rの格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。J C Rの格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、J C Rが保有しています。J C Rの格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、J C R に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NR S R O 登録状況
J C R は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating O rganization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先